十五言、緑

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それから家に帰って、冷蔵庫に何も無かったからコンビニに飯を買いに行った。 どこをほっつき歩いているのか知らないが、椿は今日も朝帰りだった。 近くのコンビニだからと店を開けっぱなしで行ったのが運のつきだった。 店に戻ると、――俺の明日御客へ渡す用のブーケの前に、スーツの男が立っていた。 仕立てのいい、糊の効いたストライプのスーツ。 一本も乱れの無い、ワックスで固められた髪。 後ろ姿だけで、俺は誰か分かった。 10年ぶりなのに、分かってしまった。 不快だ。 不快過ぎる。 「誰、お前」 わざとらしく、そう聞いた。 その男は、勿体ぶるようにゆっくり俺の方へ振り向いた。 10年ぶりの奴の顔を見ると、心はざわざわとざわつくのに、凍てつくように冷たく固まっていく。 「また、会いに来てしまってすいません」 目尻に深みが出て、少し大人っぽくなっている寒田が此方を懐かしげに見ている。 愛おしむようなその瞳が、今すぐ泣きだしそうで酷く不快だった。
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