十五言、緑

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空気を読んだ椿が息を飲み、二階へ駆け上がる。 俺はテーブルの上に置いた空の花瓶を眺める。 寒田は俺を真っ直ぐに見上げている。 水に濡れ、尻餅を付いた情けないまま、俺を。 一分も経ってないが張り詰めた空気は何時間にも感じられた。 絡み合う事はない視線は、虚しい。 壮行しているうちに、椿が二階から駆け下りていく。 せっかく帰って来たのにまた出掛けるようだ。 「俺が付いた嘘は、――貴方には許せられない嘘のままですか?」 ――許せられないまま? その言葉に、俺は花瓶を床に叩きつけた。 キラキラとガラスが星屑のように散っていく。 「許すも何も」 声が震えて情けなかったが話を続ける。 「お前は俺に死に物狂いで謝ったか?」 寒田の切れ長の瞳が大きく見開いたように見えた。 視線は交わさなくても、分かる。 「お前の嘘は、18年経てば風化されて許せちまう嘘か? 俺は善人じゃねーぞ。糞野郎」
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