2923人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前は、俺が18年前のまま、お前を許せないだけで怒っているように見えるのか?」
ゆっくりと視線を絡めた。
18年ぶりに、寒田を見つめる。
「悪ぃが、俺はお前にもう好意は一ミリもない」
正直な話だ。
これから先、許せてもう一度恋人に戻るつもりは毛頭ない。
これ以上はもう俺たちには先が感じられなかった。
楽しかった思い出も、セピア色に染まって色褪せていく。
それぐらい、俺は信じきっていたお前の嘘や、
俺から逃げた10年が許せなかった。
「じゃあ……やり直します」
立ち上がった寒田は、濡れた髪を掻き上げながら言う。
「もう一度初めから、太陽さんを口説きます」
「椿の子育ても、バイクの修理も、もう会いに来る口実は全てないのにか?」
鼻で笑うが、寒田は真面目な顔で真っ直ぐ俺を見る。
「貴方を好きという口実があります」
嘘もないと真っ直ぐに。
最初のコメントを投稿しよう!