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いっそ、出会わなければ良かったと、何度、思ったことか。
心を捉えて離さないんだ。
最初はただ、気になるとか。
人懐こい奴だとか、
家事を手伝ってくれる便利だとか。
それを恋の始まりだというのか。
笑顔を見たい、傍に居たい、
その体温に触れてみたい、
自分の気持ちを知って欲しい。
恋が心に広がって満たされていく。
お前が欲しい。
離れたくない。
大好きだから嘘を吐く。
大好きだから正面から向き合う。
たった一人になりたいから、その気持ちを紡いで、
――それが愛になる。
無償の愛。
俺と寒田は時間をかけて、ゆっくりと恋が愛に代わって行く過程で――長いこと時間が止まってしまった。
長い時間の間に――、
一杯失って一杯壊れて、やっと今その信実に向かい合う事になっちまったんだな。
会いに行こうと思う。
18年ぶりのあの日の緑に。
上手にさよならを言う為に。
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