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ウロウロしていた俺に緑の部屋を教えてくれたのは、先ほど俺に蹴られた雷也だった。
俺が海からこのホテルへ入って来るのを待ち構えていたらしい。
「寒田の部屋の鍵」
「お前、少しは使えるじゃん」
カードキーを貰うと、雷也にそう言った後、釘を刺す。
「だけど、お前は椿を泣かせまくりそうだから、まだ認めてやらねーぜ?」
「泣かせたら、二倍は幸せにしてやってるよ」
――二倍、ねえ。
雷也も椿も、傷つくことなんか怖くねぇて顔して、全身でぶつかっていっている。
俺たちとは大違いだ。
傷付きたくなくて嘘を吐いた俺達とは。
ノックもせずにカードキーを差し込んだ部屋には、淡いベットサイドの光しか灯っていなかった。
きちんとソファに畳まれて置かれたシャツやハンガーに掛けられたスーツ。
真面目な緑の性格がそのまま部屋に現れていた。
「寝るの本当に早いな」
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