甘い恋の、嘘をちょうだい

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この数時間が辛かった。 空港に着いたら、既に緑の事務所の奴が出口に立っていて、スマフォを片手に人物と画面を何度も交互に見ている。 緑に俺の顔写真でも送って貰ってたんだろう。 俺の顔を見て、ワンコのように明るい表情になり走ってきた。 「華野 太陽さんですよね」 「――……ああ」 「行きましょう。車を用意しています。貴方を必ずKENNのいるスタジオに送り届けて下さいって寒田さんに言われたんです」 くるくると表情の変わる男だった。頭が良さそうな、上品そうな若い男。 腕を引っ張られ、車に引っ張られても嫌な気はしない。 前だったら他人に触られてら気もと悪いだけだったのに。 「悪い。迷惑かけた。でも、乗らねえ」 自分でも驚くぐらい憔悴しきっていて、恥ずかしいぐらいだ。 「そんな、困ります!」 「自分の足で行かなきゃならねーんだ。俺はいつまでも緑に甘えてたら、今から会いに行く奴が俺を信用してくれねーんだ」 もしかしたら、もう既に呆れられてしまっていたかもしれないけれど。
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