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その言い方が、今までのクールなKENNじゃなくて、甘えたガキみたいで思わず笑ってしまった。
笑ったのに。
「また、泣く」
同時に泣いてしまったようだ。
「俺には、家族は椿がいるけど、でもまあ、」
俺もお前が欲しいよ。
そう泣いてるのか笑っているのか分からない情けない顔で言うと、またお互いを抱き締め合った。
KENNの言葉は、例えもう、嘘さえも愛しくなっているんだと思う。
吐息も、体臭も、顔も、身体も、言葉も、声も。
KENNを形成するものは、たとえ傷さえも愛おしかった。
KENNが、肌に張り付いた俺の髪を、何度も指先で梳く。
その行為を、たまに俺がKENNの指を口に含んで邪魔をする。
他愛ない、意味のない行為に、一言、二言会話して、キスをする。
そんな二人だけの時間に、いつしか窓の外は雨が止み――外にはもう宵の明星が顔を出していた。
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