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「初心者どころかド素人の分際で、包丁で皮が剥けるか! ピューラーがあるだろ」
「ピューラーって?」
「!?」
本当に料理に触れて来なかったのか、首を傾げられてしまった。
仕方ないか。
いちいち、野菜を渡す時に微かに触れる指先にドキドキしてしまう。
そんなの――言葉にしたら36歳なのにダサすぎるから頑張って嘘を身に纏うけど、きっといつか気づかれて甘くおねだりされてしまうんだろうな。
KENNの豪快で自分の手まで切ってしまうそうな皮むきにハラハラしていたら、テレビの中のKENNが新曲を歌いだした。
俺の名前まんまの、何も捻りのない、愛の歌を。
そんなストレートなKENNだから、良かったんだと思う。
御互いの不器用な心を――これからゆっくり曝け出して行こう。
ストレートで偽りのない、力強いKENNの歌の様に。
「KENN」
「ん?」
俺は、KENNの手から野菜を奪うと、背伸びしてKENNの唇に自分の唇を寄せた。
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