2923人が本棚に入れています
本棚に追加
「えー……っと?」
これはもしや別れ話?
そういや俺、成り行きで付き合ってたから言葉は無かった。
なのに終わる時はそんな言葉が必要なのか。そうか。
「やはり、不安になっちゃって。椿くんは可愛いけど、私、私、自分の子供が欲しいし、好きだけど、お母さんが子持ちはって大反対で怖くなって……」
ポロポロと堪え忍んで泣く千秋は、色々と不安を吐露してくれた。
それに気が付かず、打算でその好意を利用して安心させる言葉をやらなかったのは俺だ。
「安心させてやれなくて、ごめんな。ずっと俺、自分の事だけだったな」
ポンポンと頭を撫でると、千秋はワッと泣き出す。
そうか。これが『別れる』という儀式なのか。
「多分、千秋が最初で最後の彼女になりそうだ」
自分の心の平穏に相手の好意を利用するのは違うと思う。
少なくても千秋といる時は、俺は緑か椿の話ばかりで。
こんな風にデートなんてした事無かったから。
最初のコメントを投稿しよう!