一、桜の花弁の賭け

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なんでデイビットさんはいちいち言う事がその、こっちが聞いていても照れてしまうような言い方なんだろう。 私が男性という人物を知らないだけなのかな? 一人首を捻っていたら、庭を通り過ぎ、門の前に差しかかった時、ぐるんと振り返って来た。 「そんなに警戒して距離を取らないでください」 2、3メートル後ろを歩いていただけなのに、泣きそうな顔で私を見る。 そんなつもりは無かったので、すぐに一メートルぐらい近づくと、悲痛な眼差しで首を振った。 「違います。此処まで来て下さい」 指で指示した場所は、――デイビットさんの隣。 「や、そんな、近くまでは、ちょっと」 「遠慮がちなのは日本人の悪い癖です」 ――遠慮なんてしていません。 そう言えたら良かったのに。デイビットさんが泣きだすのではという寂しげな表情をするので、困ってしまう。 おずおずと近づくと、嬉しそうなニコニコ顔で私を見た。 整った、絵本から飛び出て来たような王子様スマイルに顔が熱くなってしまう。 「あの、では此処で」 門を開けた瞬間に深々とお辞儀すると、デイビットさんが「もう少し」と首を傾げて強請って来た。
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