一、桜の花弁の賭け

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「だめ?」 「だ、めと言うか、その」 「駄目じゃないなら、『良いよ』か『はい』って言って欲しいです。私には、日本の女性の心を感じ取るのは難しい」 そんなに流暢な日本語を操っていながら、こんな時だけ外国人を装うなんてズルイと思う。 「じゃあ、『いいえ』です。私、私なんて、招待されるほどちゃんとした大人じゃないし、出来ればイベントも『いいえ』したいです」 私の方が、母国語なのに自分の気持ちを表すのが下手くそで、何だか日本語まで変で。恥ずかしいし、デイビットさんは綺麗な顔だし、ますます顔が上げられない。 「日本人は『いいえ』を言うのは苦手なのに、美麗さんはきちんと言えて素晴らしいです。でもそれも私は『いいえ』します」 「え」 今、認めてくれたんじゃなかったの? いいえのいいえ? 「なぜ、イベントに来るのが恥ずかしいんですか?」 あ、イベントに行きたくないってことを『駄目』なんだ。 多分、デイビットさんの納得いく理由をはっきり言わなくちゃ、行かないは駄目ってことか。
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