プロローグ

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「あっはっはっ」 矢野の笑い声が響く。 私に水をかけた男子は私のまえにずいとでて、うしろにむかってガッツポーズをした。 そしてそのまま嬉しそうに矢野たちのいる教室後方に歩いていく。 教室がしんとしずまり返った。 響いているのは矢野たち不良グループの下品な笑い声だけ。 まわりに座っているクラスメートは全員無関心を決めこんでいる。 男子も女子も誰ひとりこちらを見ない。 私をたすけてくれたり、私にやさしい言葉をかけてくれたりしない。 もしそんなことをしてしまえば、次のターゲットが自分になってしまうおそれがあるからだ。 さすが優秀な私立校だった。 みんな自分を守りたいのだ。 賢明な判断というやつだ。 私はさすがにがまんができなくなった。 かんにん袋とか忍耐とかそういったたぐいのがまんじゃない。 泣くがまん。 涙をこらえる限界というやつだった。
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