プロローグ

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全身ずぶ濡れのまま、きびすを返す。 教室をでようとドアにむかって歩こうとする。 しかし、それをはばまれた。 「おい、宮沢」 うしろから矢野の声が響いたからだ。 「教室を水びたしにしたのはおまえだろ。ちゃんと拭いて掃除しろよ」 逆らえない。 しかし、この教室に雑巾などない。 清掃は業者がはいってやっているし、一枚二枚ある布切れはおそらく矢野に使用禁止命令がだされるだろう。 私はべつの布切れを手につかんだ。 布切れは私の机に山となって積まれている。 今朝、矢野たちに切りきざまれるまでは私の体操着だったものだ。
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