プロローグ

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その朝、いつもの時間に登校した私の目にうつったものは、体育の授業中いつも私が着用している服だった。 それが教室の私の机のうえにのっている。 まごうことなき私の体操服。 いや「体操服」といういいかたは、もうすでにただしくない。 ただしくは「もと体操服だったもの」だ。 ジャージ素材のハーフパンツは極太の短冊みたいに切りきざまれ、ぶ厚い化繊のTシャツは縦にハサミをいれられたのか、すだれみたいになっている。 私はしばらく机のうえにのったものを見て、ぼうぜんとした。 怒りや悲しみや情けなさは感じない。 すでに私の感覚は麻痺している。 また新しいものを買わなければいけない。 そんな思いが真っ先に頭をよぎった。
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