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がっしゃーん。音に、どきりとした。皆止まってた。カビンがわれている。われたやつがいっぱいひろがって、水がうわばきをぬらしてる。近くにいた男の子が、あたまをふった。まだ、みんななにもしてないのに。カビンを見て、目と目をちろちろあわせる。
「えっと……しんくん?」
「ちょ、おれじゃない。違うよ、違う!」
手をぶんぶんふった。でも、それならだれがこわしたの。わたしは、しんくんにつめよった。ぎょろぎょろ目がうごいて、あやしい。きーきー、女の子がしんくんに言ってる。
「しんくんがやったの?」
きめつけたら、だめってお父さん言ってた。
「やったよ、絶対やったもん」
「みたの、しんくんがやってるところ」
「みて、ないけど……やったもん。だって、ちかくにいるよ?」
「そうかな……」
あれ、どうだったかな。しんくんを見たら、まだ頭をふってる。しんくんの服は、ぬれてない。うわばきはぬれてる。わたしはぬれてない。わたしは近くにいなかったから、ぬれてない。
「いーけないんだー、いけないんだー」
とおくの男の子が、しんくんに言った。わたしはきっとにらむ。すると言わなくなった。でも、どうしよう。
「しんくんはしてないの?」
「してないよ、本当だよ! だって、おれやってない!」
しんくんにどんって押された。よろけて、背中を机に打った。なにするの、と言うまえに、しんくんは走って教室から出ていこうとしていた。昼休みから戻ってきた先生に、しんくんがぶつかった。
「あ、おお! あ、あれ、進君? と……皆。あー……皆前に集まってどうしたの?」
たちばな先生。年齢は二十九で、ちょっとかっこいい。男の先生だから、だから女の子は集まって、きーきーしんくんが悪いって言った。わたしも先生にちかよって、女の子をゆっくり腕でおした。
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