お飾り社長

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「それを聞いて安心した。これからずっと睨まれ続けるなんてゴメンだからね。というより、俺は彼女になにかしたかな?」 不思議そうに首を傾げるハリーにかける言葉を、僕は持っていなかった。会社を辞めるとき、アメリカの友人に呼ばれた、という理由で辞めたのだ。その時から金木さんはハリーをいいふうに思っていない。そして、僕にも刺々しくなった。それを言っても仕方がないため、ハリーには言っていない。まぁ、時間が経てば次第に仲良くなるだろう。 「場所はサンディエゴだっけ?」 初心者丸出しの観光地図を取り出して、ハリーに尋ねる。 「ああ、一年中涼しくて過ごしやすい場所さ。ただ、スパニッシュが多くてね。きれいな英語で学んできたシシメにはキツイと思うよ」 僕に英語を教えたハリーが自画自賛しながら、呑気に語る。地図でみる限り、確かにメキシコとの国境線近くだ。スパニッシュは一度聞いたことがあるけど、あれは英語に近い別の言語のような気がする。
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