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「ハリー、ここはどこかの大企業の本社かい?」
僕の問いに、ハリーはおかしそうに笑いながらキーを手渡してくる。
「おもしろい冗談だねシシメ。ここは君たちの事務所だよ」
事務所と呼ぶにはあまりにも大きすぎた。僕と金木さん、そしてここで待っているMGの3人しかいないはずだ。はっきり言って、この十分の一以下でも快適に過ごせる。
「大きすぎだ」
「そんなことはないよ。サンディエゴは日本みたいな娯楽施設が少ないからね。この事務所はそれも補っている。温泉やプールやコンビニまで何でも揃ってる」
頭が痛くなってきた。後ろを振り返ると、金木さんも口を開けて、その巨大な建物を見ている。と、目が合った。慌てて口を閉じた金木さんが、ムッとした表情で近づいてくる。マズイ。
「何を見てるんですか」
「いや、金木さんをとんでもないことに巻き込んでいる気がして」
「そんなこと、志々目さんは気にしなくて良いのです。……いえ、こう呼んだほうがいいですね。『社長』」
「う……やめてくれないか、その呼び名」
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