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「――ただいま」
あっ、帰ってきた!
「いっちゃん、お帰りなさーい!」
「あ? チカじゃねぇか。また来てたのかよ」
ふふっ。いっちゃんのこの不機嫌な仏頂面、相変わらずだなぁ。
「チカ、いっちゃんを待ってたんだよ?
教室に行ったら、親切な人が弓道部は部活休みって教えてくれたから」
「ちっ。誰だ。余計なこと言いやがったのは。
つか、いい加減『いっちゃん』言うの、やめろ」
「ねぇ、いっちゃん。ひさしぶりに、チカの書を見てほしいんだけど。いい?」
「話、聞けよ。全く。
てゆうか、俺は忙しい。ガキの相手はごめんだ」
あ、素っ気なく通り過ぎようとしたって駄目だよー。
「いっちゃん? 初琉ちゃんがさっき言ってたよ?
『今日のおやつは、パイ尽くしだから楽しみにしててね』だってー!」
「げっ……この甘ったるい匂いは、ソレか」
「ねぇ、いいでしょ? 書のお稽古、みてよ。
ちゃんと、お道具も持ってきたし」
「……チッ、仕方ねぇ。
おい、チカ。その代わり、帰りに俺の分のパイをお前に持って帰らせてやっからな。覚悟しとけよ」
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