第14話

浮かび上がった一つの疑問

実は直也さんと今日子は職場恋愛である。

ゆえに、今度会うことになっている課長さんと部長さんは
妹もよく知っている方なのである。
妹もお世話になった方々だ。

そこで私たちの脳裏には、こんなことが浮かんでいたのである。

お金を返す時には、
妹が行くべきではないのか、ということである。

もし妹が一人で行くことが心もとないというのであれば、
私の横に妹も同行して来た方がいいのでは？ということだ。

どちらかが礼儀ではないかと私たちはそんなふうに考えたのである。

少なくとも私一人だけが行くのはおかしいのではないか、ということである。

こんな私たちの考えを妹に伝えてみたところ、
即座に返ってきた返事は
「そんなこと出来ない」
というものだった。

「そんな恥ずかしいこと出来ない」
「合わす顔がない」
「絶対に嫌だ」
妹は取り乱すようにこう言った。