第1章

3/5
前へ
/5ページ
次へ
祖母は急に倒れた。病院へ行くと脳出血だったそうだ。僕は幼かった。 ただ、家族と一緒に震えているだけだった。 その時の祖父がどんな気持ちだったのかは、想像するしか無い。 恐らく、病院の先生から聞かされたのだろう、祖母は脳死だと。 今の状態は機械で身体を生かしているだけだと。頭の中は死んでいるのだと。 祖父はお祖母ちゃんの「死の時間」を決めなければいけなくなった、のだろうと。 どれくらいの葛藤があったのだろうか。 愛する人の「死の時間」を自ら決めるなんて。 お祖父ちゃんの時間は、そこで一回終わったのだろう。 それからの祖父は、以前の祖父ではなかった。アルコールに、逃げ場を求めるだけの人になってしまった。 死ぬまであの事を引きずってたお祖父ちゃん。 やっと、一緒に成ったね! 空の祖父母にそっと言葉を捧げる僕がそこに居た。 空の祖父母を見上げる僕自身の周りには、降り積もった赤々としたカエデが静かに空を見上げていた。 ―終わり―
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加