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「ちる? 久しぶりだね」
純白のモーニングを身に纏ったすらりとした体形で背の高い男性。彼の黄金色の髪は灯りを受けて煌めいている。
「イーグルさん、お久しぶりでーす」
知った顔にふわりと安堵の笑みを浮かべ、挨拶を返した。
「こんな隅でどうしたの?」
優しく尋ねられ、ちるは眉を八の字にして彼の翠緑玉を見上げた。
「わたし、このような会に参加するのが初めてで、作法がわからず困っていたんですー」
イーグルはきょとんと目を瞬かせた後、クスリ、と微笑った。
「このパーティーはそんな格式ばったものじゃないから、思うままに楽しめばいいと思うよ」
そう言って、軽く手を挙げた。
彼の行動に気付いた給仕をしていた男性がイーグルに近づいた。そのままイーグルは給仕から二つグラスを受け取り、片方をちるに手渡した。
「こうして手を挙げれば、会場内のボーイが来るしね」
「わぁ~。ありがとうございます~」
ちるは流れるような動きに魅せられ、遅ればせながら礼を言う。イーグルは片目を瞑ってそれに応え、ちるの肩に手を添えた。
「こんなところで壁の花になるなんてもったいないよ。せっかくだから楽しもう?」
「はいっー!」
****
色とりどりの器に盛りつけられた様々な料理たち。たくさんの香りをそれぞれの料理が芳しているのだが、それぞれの香りが反発し合うのではなくお互いの香りがほどよく合わさり芳しい香りとなっていた。
「このお料理、とてもおいしいですー」
ちるは見ているだけで幸せだとわかる満面の笑みで料理を味わっていた。
「ちる、楽しい?」
微笑ましく見守っていたイーグルが聞く。
「はいーっ! とてもっ!」
新しく口に運ぼうとするのをやめて、大きく頷いて応えたちる。
「それはよかっ――」
突然、イーグルは言葉を止め、ぐっとちるの肩を引いた。
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