第二章

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「あはははは!」 このマンションはペット禁止だ。 預かっているだけとはいえ、大家の耳に入れば、面倒なことになりかねない。 セラは失礼にならない程度にドアを閉め、リューイチを男の目から隠した。 「あ、それ、ウチの荷物ですか?」 ドアの隙間から覗くようにして尋ねると、気配を消したリューイチを、男は気味悪そうに眉をしかめうかがいつつ、 「いえ、実は隣のお部屋の荷物なんですが。お留守のようなので、何かご存知じゃないかと思って……」 と、そう言った。 男に言われて、セラは思い出した。 「あ、お隣の方、旅行に行くから、しばらく留守にするって言ってましたよ」 愛想よく応えながらも、足元では、必死にリューイチを追い払っている。 リューイチは、ともすれば、ドアの隙間に鼻づらを突っ込みそうな勢いで、グイグイと体を押してくるのだ。 宅配便の男は、 「ああ、そうですか」 と応え、 「それなら大家さんに荷物を預かってもらうことにします」 リューイチの存在が気になるのか、セラの部屋を何度も振り返りながら、廊下を歩いて行った。
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