第二章

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「もうリューイチ! 見つかったら怒られるのは私なんだからね」 セラは怒るが、リューイチは知らん顔で、またセラのベッドの上に戻っている。 相変わらず窓枠に足をかけて、セラのお説教など、どこ吹く風と、ジッと階下を見つめている。 まるで、大きな黒ヒョウのはく製みたいだ。 暖簾に腕押し、糠に釘。 そして、ネコに小判。 最後のは何だか違う気がするが、ネコ相手にムキになるのも馬鹿馬鹿しくなって、セラはさっき飲んだミルクティーのカップを片付けようと立ち上がった。 すると今度は、 『ピンポーン』 1階からのインターフォンが鳴った。 こちらはカメラが無いので音声のスイッチを入れてみると、みみこからの宅配便だと言う。 ロックを解除して来訪を待つ間、思わずリューイチに言い聞かせていた。 「いい? あなたが見つかったら、本当に困るんだからね。今度はおとなしくしててね」 果たしてどれだけ効果があるものかと危ぶんだが、 今度はリューイチは、宅配便が来ても玄関に来ることもなく、ベッドの上で興味のない顔で寝そべっていた。
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