第三章

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……いや、  目の錯覚だとセラは頭を振る。 第一、ネコは笑わない。 みみこは、 『バカに仕切った目で見る』とか、 『召使いだと思っている』とか言っていたが、 そういうのは、単に比喩にすぎないのだ。 『落ちつけ』 と自分に言い聞かせて、 「ちょっともったいない……」 思いながら、刺身で食べられる鮮度のマグロに、少し火を通した。 リューイチのネコ皿は、呆れたことにノリタケだった。 緑に絵付けされた皿に、焙って切ったマグロの赤が、よく映える。 ……美味しそうだ。 思わず、ゴクリと喉が鳴る。 ノリタケの皿を、申し訳ない気持ちでテーブルの下に置いて、 「リューイチ、ご飯だよ」 呼んでみたが、リューイチはこちらをチラリと見ようともしなかった。
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