セラちゃん 第一章

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「リューイチは子どもが嫌いだから、家族持ちには頼めないし、ましてや女性の独り暮らしには、なおさら頼めないの」 ネコが子ども嫌いと言うのはよく聞く話だが、女性の独り暮らしに頼めない、とはどういう意味だろう。 セラの疑問は無視して、みみこは続ける。 「セラちゃんってば、確か彼氏と同棲中だよね。 そんでもって美人さんだから、セラちゃんなら、リューイチもおとなしく居てくれると思うんだ。 お願いっ! もうセラちゃんにしか頼めないの」 「えと、だから? そのリューイチくんってネコだよね?」 「うん、ネコだよ」 「ネコに人間の美醜がわかるの?」 「ウチのリューイチは面食いなのよ!」 みみこは電話の向こうで号泣する。 「だからいっつも、すっごいバカにした目付きで私を見るの。 リューイチってば私のことなんか、ただの召使いとしか思ってないのよ!」 セラは少しだけ言葉を無くした。 だけどもう何度目かの問いを口にせずにはいられなかった。 「だから、そのリューイチくんってネコだよね」 「うん、ネコなの」 良くわからないが、いつの間にか引き受けることになった。
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