その後の彼が会社を辞めない理由

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ギュウッと比呂斗の腕の力が増して、俺はおずおずと比呂斗の背中に腕を回した。 そっと抱き締めると、さらに強い力で巻きついてきて、そのままドンッと壁に押し付けられた。 ようやく顔を離した比呂斗の瞳は潤んでいて、思わずその白い頬に手をかける。 と、手に持ったままだったカードキーに気付いた。 「あ…………」 「ああ…………ちょっと待ってて」 比呂斗に返そうとすると、黙って首を振り、比呂斗は部屋の奥へ走って行った。 程なく戻って来た比呂斗の手には、小さな箱。 「ほら」 「え?」 「やる」 ぶっきらぼうにズイと差し出されたそれを手に取り、促されるまま蓋を開く。 「使えよ、それ」 そこに入っていたのは、黒いラムスキンのキーケースだった。
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