その後の彼が会社を辞めない理由

12/24
前へ
/24ページ
次へ
頬を紅潮させて、まだ繋がれたままだった腕を振りほどき、帰ろうとした。 しかし、比呂斗は強く握ったまま離そうとしない。 「とにかく部屋に行こう。千里さんも」 「あ、ああ…………」 目をシパシパさせながら、その千里という男もついてきた。 比呂斗は開いたままだった自室のドアを開け、俺を玄関に放り込む。 つんのめるようにして入って顔を上げると、さっきの女が同じ格好のままで心配そうにこちらを見ていた。 「さっきの!? あッ…………比呂斗、お帰り」 「ただいま」 比呂斗は全く動じずに靴を脱ぎにかかる。 「ほら、お前も早くしろよ。玄関狭いんだから、千里さんが入れない」 「あ、千里も一緒だったんだ?」 「ああ」 でかい図体を申し訳なさそうに縮込ませながら、千里も入って来た。 ようやくドアが閉まる。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

209人が本棚に入れています
本棚に追加