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ぷうっと頬を膨らませて幼い表情を見せた美佐斗の頭を千里さんが撫で、ボストンバッグを手に取った。
「じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
訳の分からぬまま、俺も軽く頭を下げると二人は出て行った。
急に静まり返った玄関。
「ああ、うるさかった」
比呂斗は軽く伸びをしながら、部屋に入って行く。
「…………何で突っ立ってる? 入れよ」
「…………」
俺はまだ茫然としたまま、足が動こうとしない。
そんな俺に呆れたように溜め息をついて、比呂斗が戻って来た。
「どうした?」
「俺…………」
言葉が続かなくて、下唇を噛んだ。
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