その後の彼が会社を辞めない理由

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クスッと笑って比呂斗が下から見上げてくる。 その余裕の表情に居たたまれなくなって、思わず顔を背けた。 「風呂の工事も今日で終わったし、千里さんも出張から帰って来た。もう、いつも通りだ」 「…………そうか」 素っ気なく、それだけ返すと比呂斗は見透かしたようにクスリとまた微笑んだ。 促されてリビングに入る。 散らかっていると美佐斗が言った通り、雑誌やら新聞やらが適当に置いてあり、お世辞にも整っているとは言えなかった。 「…………お前の部屋、入るの初めてだな」 「そりゃそうだよ、俺の部屋は家族しか入れないから」 「ッ…………」 家族という言葉に反応して、また苦しくなる。 「じゃあ、俺…………」 思わず踵を返そうとすると、腕を掴まれた。
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