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予想もしてなかった言葉に、思わず言葉に詰まる。
グッと抱き寄せられた頭に、カッと血が上って行くのが分かる。
「お前、勘違いばっかするし、すぐ身を引こうとするし…………嫌なんだよ、そういうの…………傍にいろって言ったよな…………」
「でも、比呂斗…………」
「ほら」
グズッた鼻をすすると、無理やり顔を上向かされ、視線を合わせられた。
「俺といるとお前、我慢ばっかしてるんだろ? 分かってんだよ、そういうの。ハッキリ言えよ。仕事だったら、何だって言うじゃないか」
「ええ」
本当に…………仕事のことだったら、何も妥協せず、とことん言い合えるのに、二人のことになると途端に俺は情けなくなる。
言いたいことも言えず、やりたいこともせず、ひたすら比呂斗に嫌われないか怯えるだけの男になり下がってしまう。
俺は眉を下げて泣く寸前で、きっとどうしようもない顔をしてるんだろう。
比呂斗はフッと笑うと、俺の姿勢を正させ、俺の肩に手を置いた。
そうすると俺より10cm以上も背の低い比呂斗を完全に見下ろす格好になる。
ああ…………食っちまいたい。
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