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余計なものは何一つ出ていない俺の机の上に、見慣れないカードキー。
摘み上げてしげしげと見つめるが、フッと息をついて机に放り投げた。
どうせ、比呂斗の物だろう。
比呂斗は電話をしたり、考え事をしたりする最中、うろうろと部屋の中を歩き回る癖がある。
それだけなら良いのだが、その時に物をあちこちに置いて回るのだ。
無意識にしているらしく、後であれがない、これがないと喚くから、それらを元の場所に戻しておいてやるのも俺の役目。
機密書類も出しっ放しにするから、俺が片づけをしてからでないと八木さえ中に入れられないのは困ったものだ。
…………しかし、あいつは今日、直帰じゃなかったか。
スケジュール帳をめくって、比呂斗の予定を確認する。
今日の最後は会食だから、俺の家には来ないだろう。
比呂斗は週に3,4日、一緒に退社する日は俺の家に来る。
しかし、比呂斗が一人で直帰するとき、特に酒の席の後に来ることはまずなかった。
それに…………なぜかここ2週間あまりは全く俺の家に来ていなかった。
「…………合い鍵、持ってるのかな」
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