その後の彼が会社を辞めない理由

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俺の家より数段しっかりした造りのマンションに、気後れしながらインターフォンを鳴らす。 当然ながら、誰も出ない。 エントランスに誰もいないことを確認しながら、比呂斗に電話を掛けた。 「ああ、もう着いたのか? なら、先に入ってろよ」 「え?」 「俺ももう着くから」 言いたいことだけ言って、電話は簡単に切れてしまう。 戸惑いながらもキーを使い、部屋を開ける。 家主の許可を得たことなのに、悪いことでもしているかのように心臓がドクドクと鳴った。 意外なことに照明が付いている。 「付けっ放しか……」 比呂斗のやりそうなことだ。 薄く笑って靴を脱ごうとして気付いた。 細いピンヒール。
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