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 頬を撫でる冷風も、肩が触れる程度の距離で座れば不思議と辛さが和らいだ。それほど体温の高いヤツではなかったと思うのだが。人肌という言葉を思い出しながら、十八にもなっていまさらその本質を知る。  ああ、俺の体温か  こうして一緒に飯を食える友人がいるだけで、眼球の潤みが微かに引いた。しかしすぐにそいつがいなくなることを思い出し、ふたたび熱が戻ってくる。  寒さで垂れた鼻をすすった。 「いるか?」 友人が食っていた物を差し出す。 「食っていいのか?」 「水臭えな。オレ達の仲だろうが。ポテトは貸しか?」 「わかった、もらおう……」  すでに揚がってから少し経っているとは言え、それはずいぶん冷たく感じた。なのに飲み込んだ体は燃料を吸い上げ、熱を上げた。 「寒いな」 「ああ」  真冬に比べてたいした事のない初秋の風にとってそれは心外だろう。だが風が会話の繋ぎなどという文化的行動を、説明したところで理解できるとは思えない。  センターまであと130日か。不意にそんなことが頭をよぎった。受けもしないくせに何を気にしているのかと自分でもおかしくなる。そうして気づいた。自分はおかしいのだ。 「大学行ったらどんなヤツがいるかな」 「類は友を呼ぶからな、おかしなヤツばかり寄ってくんじゃね?」 「そっか……そうだな。お前も友人なワケだが」  自分で言っていて虚しくなる。気が付けばあたりは日が落ち、冷たい月が煌々と光っていた。  突如、月が頭上に回り込み、自分の後頭部に激突した。 「痛ッ!?」 「ったく、いつまで落ちてんだよ。逆だろ?こっちを元気づけろや!」  友人のローファーが叩いた箇所の痛みをさする。落ちた箱からポテトのカスが散らばり、見上げた友人は月明かりを背にケラケラと笑っていた。 「はぁ。人の気も知らずに、お前は」 「お前の気なんかオレが知るかよ」  つられて自分も笑った。結局離れ離れになろうが、自分はコイツに振り回され続けざるを得ないような気がしてうんざりし、また安心した。 「月、綺麗だな」 「ん?あっ、ほんとだ!なんだよ気の利いたこと言えるじゃんか」  空を見上げた彼女の横顔はあの日と同じで、あの日を照らした斜陽を思い出してかどこか体が暖かかった。
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