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 テルの相手は陸上部の細貝(ほそがい)豪(つよし)だった。中距離選手の細貝は、武術が苦手である。試合が始まっても、賭け率で2位グループにいるテルを恐れて、まったく手を出してこなかった。狙ってきたのは、5分間最後まで逃げ切っての引き分けである。  おまけの延長戦をなんとか凌(しの)いでも、クラス多数決の判定で負けるだろうが、それで十分と細貝は判断していた。怪我(けが)をせず、谷(たに)照貞(てるさだ)に圧倒的な一本を与えなければ、それでいい。なんといってもテルは、あの怪物・佐竹(さたけ)宗八(そうはち)と乱取りでいい勝負をするほどの実力者である。  生徒たちは口々に叫んでいた。 「逃げるな、細貝」 「それでも日乃元(ひのもと)の進駐官か」 「男なら正々堂々と闘え。闘って散れ」
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