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 祭囃子。笛の音。人々のざわめき。  今日は川を挟んで山の向こう側で、夏祭りが行われているのだ。  老若男女が浮かれ、羽目を外す日。  そんな日だっていうのに、私は一人だった。  橙の色彩を闇夜に浮かべている提灯に映し出されている川辺は、先日まで続いた雨で増水してしまっている。足場の泥濘はなんとか乾いてくれたので今日の祭りが実施できると知って村中が喜んでいた。  そんな村の人々が待ち望んでいた今日この日。  私は祭りが行われている街側とは反対側の、山側の暗い川辺を一人、狐の面を被って歩いていた。といっても、私がぼっちなわけではない。決して。  私は、私達は、『言葉のない約束』をしている。  毎年の夏祭りに落ち合おう、と。  そしてそれはお互い、他に好きな人ができるまで続くのだ。なんて。少し自惚れが過ぎるだろうか。まるで私と彼がそういう関係であるように言っているが、別にそんな訳でもない。だって………。  徒然と思いを馳せていると、待ち合わせの場所に着いた。彼はもう来ている。  彼は、天狗の面を被っていた。
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