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 彼の頭を膝に乗せる。  震える手で彼の頬に触れると温かかった。  そのことに安心して、私の目からは涙がとめどなく落ちている。私がこんなに感情を表に出せるなんて私自身も知らなかった。  彼の温もりが愛おしくて愛おしくて、思わず彼の頬に添えた手に力を込めた。 私の両脇には土の壁が出来ていた。彼を掘り起こすためにどかした土だ。ここまであからさまに事を起こしてしまったら、私は彼の元から去らなければならない。  早く。早く。  彼が目を覚ます前にここを離れなければ。  そう頭ではわかっているのに、その意思に反して私の体は動いてくれない。  私の涙は、いつしか安堵のものから別れの悲しみによるものへと変わっていった。  それでも。  彼に怯えられるのだけは嫌だった。  私と彼との違い。  私と人との違い。  母さんがいつも口を酸っぱくして言っていた意味がわかったような気がした。  私たちは天狗。  山の神に仕え、そして人外の力を使う人ならざる者。  人はこんな力を使えない。  自分たちの常識で測れない力を人は恐れる。それはもちろん人に限らない。私たちだって同じだ。天狗としての力を超えたものを私たちは恐れる。だから私たちは山の神を恐れ、敬うのだ。  それと同じ。  その感情は理解できる。  だから恨まない。恨めない。ただただ、悲しいのだ。  ただただ、涙を流すことしかできないのだ。
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