第1章

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撮影が終わると、ルイは控え室で息をついた。 もちろん、私もそばにいる。 「お疲れさま。 ルイさんの役者魂にはいつも圧倒されちゃう」 ルイの迫真の演技を間近に見たあとの私は しばらくドキドキが鳴りやまない。 「圧倒させる演技をするのが、俺の持っている才能の全てだから」 ルイは小さく微笑んで、疲れたように息を大きく吐き出した。 「ルイさんは、存在しているだけで、価値がある人だよ」 私の ひいき眼で言ってるんじゃなくて こんなに人として美しいルイは、 人が持ってる美意識を刺激して彷彿させる。 そして、願うんだ。 自分も美しくなりたいと。 「存在してるだけで価値ある人なんていないよ。 その人の生きざまがオーラになって人を惹き付けるんだと思うし。 俺だってジジイになっていくんだから。 深雪はオレを美化しすぎ」 ルイが目を細めて微笑む。 その顔が 微笑みが 美しすぎるルイ。 私なんて、比べてしまったら ヨシのヘアメイク専属でいられる事が やっぱり奇跡で、 恋人になりたいとか ルイの特別な存在になりたいとか 恐れ多くて 腰が引けてくる。 そして、そんな関係をルイと続けていけるかなんて 芸能人のルイ相手に不可能な気がしてくる。 「どうしたの? 急に暗い顔しちゃって」 ヨシの事や ルイとの先の事を考えたら、 なんだかこれからの未来に自信が持てなくなってきちゃった。 私、どうしたいんだろう? 「ルイさんが遠くて眩しいの」 私、自分に自信がない。 ヨシと別れてルイを受け入れる自信が ない。 赤い糸は何本か用意されていて 自分の内面的なレベルに合った相手と神様は 伴侶を用意してくれてるんだとか。 迷信だけど、 なんだか信じてしまってる私。 私は最高のレベルの一番濃い赤い糸の人と結ばれたい。 けど。。。 「なんで、そんな事言うの? オレと距離を置きたい?」 ルイは何か誤解していた。 眉間にシワを寄せてるルイの瞳は寂しげに私に向けられた。 「そうじゃなくて、臆病になってしまっただけ。 何でもないの」 私はルイの視線を外して うつむいた。
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