第1章

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「そう、在庫管理はここから入っていってクリック」 「はい」 「そしてリストに合わせて数が不足しているのに発注をかける」 「はい」 河井は故意にか、なんなのか俺に身体を徐々に寄せてくる。 要員二人だけのスペースのカウンターに どう見ても配分が1人のスペースに埋ろうとしてくる。 二人でパソコンを操作してるから しょうがないのか? いや、不自然だろ。 どうみても。 DM製作に取り組んでいる 駒井がチラチラこっちを見てる気がするのは きっと気のせいじゃない。 早く終わらせよ。 「ま、こんな感じで発注は終了。 それじゃ、駒井たちとDMやっていいよ」 「あの、この間 練習会で見てもらったスタイルからまたアレンジしたデザインを考えたんですけど」 河井は俺から離れる事を拒むかのように 上目使いで聞いてきた。 「それ、駒井にまず見てもらって。 店長の俺じゃなくても、駒井だって河井より上のスタイリストなんだから」 つい、牽制してしまう。 なんでも俺に頼られても困るんだよ。 「ても、店長に見てほしいんですけど…」 「最終的には確認するから」 俺は駒井を呼んだ。 さっきからチラチラ見ていた駒井は 呼ばれた事にすぐ反応して足取り軽く近寄ってきた。 「なんすか?」 俺たちに 割り込みたい様子丸出しだった駒井は 河井に視線を向けながら 嬉しそうな顔をする。 分かりやすい男だな。 内心 苦笑いするも、 そんな駒井に河井を押し付ける。 「河井がカットデザイン見て欲しいってゆうから、まずカット図面で展開図にして見てあげて」 俺ばっかりが教育する義務はない。 「不透明な事があれば最終的に俺に聞いて」 「了解っす」 駒井の満面の笑みは 仕事以上の喜びを表していた。 と思うのも 好意があるコには率先して教えてあげたいという 密接な時間を作るのに 内心下心が俺にも深雪に対して あったから。 河井にアプローチ仕掛けてこられるよりは 駒井に押し付けてしまった方がいい。 しかし、 バレずにやってくれよ。 と、店長としての望みは託す。 俺っていい加減な店長。
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