第1章

9/39
前へ
/39ページ
次へ
あー、昨日はヨシからお仕置きと称して、犯されるところだった。 口塞がれたら 理性は保てないと キスも拒んだ。 ルイとキスしてしまった以上 義理立てしようと必死になる私。 本命はルイだから。 ヨシとは決別しないといけない。 だから私、意を決して あんなに泣いてヨシに別れを告げたはずだったのに 呑み過ぎて、 いつもの馴れ合いに戻って また肌を重ねてしまった。 昨夜、つい悪態をついて、 ヨシを傷つけたのは間違いなくて ヨシの冷たく漆黒の闇に包まれたような瞳で 見つめられて、ドキっとした。 ヨシは深く息をついて 私を羽交い締めにしていた身体を離した。 そして、 せっかく作ってくれた肉じゃがも 食べずにヨシはソッポを向いて寝てしまった。 『ごめんね』 ヨシに悪態をかまして 肉じゃがを作ってくれたヨシを怒らせた事を わずかながら申し訳なくて 寝息をたてて眠ってしまったヨシの背中を ギュッと抱きしめたんだ。 ヨシの背中は広くて逞しい。 いつも、わがままな私でゴメン。 私、ヨシから卒業したいんだよ。 私、本当に好きな人と結ばれたいの。 「はい、OK」 監督の一発OKが出た。 私はルイに近寄り、ヘアとメイクを素早く直す。 ルイは次の台詞と役への意識投入で 気を集中させていた。 ルイはほとんどノーミスでNGを出さない。 メイクを直している間も ルイの役作りに対する気迫がすごくて 息を飲む事もしばしば。 もちろん、言葉を交わす事はまずない。 ルイの役者魂の激しい灯りが 端正な顔立ちで綺麗な顔を恐ろしく彫り深く際立たせて つくづく、ルイは、一般人からかけ離れた偉人なんだって思う。 適当やそこそこな演技は絶対しない。 いつも最高のものを求めて 演技をこなしていく。 監督がルイの演技に指示をするところを見た事がないくらい。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加