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だからといって、別に何をするわけでもない。
リビングでコーヒーを飲み、そのままそこで居座って、お互いに好きなことをする。
ただそれだけのこと。
嵩史は書庫から持ち出した本の文字を追い、幼馴染は見ているのか見ていないのか新聞を眺めている。
日はまだ高くて、リビングにもぽかぽかと日差しが差し込んでいる。
ぱしん。
(あ、また、だ)
ふ、と、家鳴りに気がついて顔を上げると、幼馴染が嬉しそうに微笑んでいた。
「何?」
自分を見つめていたのなら、困惑してしまうな、と思いつつ問いかければ
「家鳴り」
と、嬉しそうに幼馴染は口にした。
「だから、何だよ」
「え~、だって、家鳴りに気がつくくらい静かなんだよ?」
「だから?」
「静かで暖かくて、ふぅちゃんがいて気詰まりじゃなくて、シアワセだなぁって思ったら、嬉しくなった」
ほにゃん、と、クッションに顔を埋めつつ、嬉しそうに幼馴染は笑う。
ぱたんと、音を立てて本を閉じ、嵩史はため息と共につぶやいた。
「お手軽なヤツ」
本を取り替えて来る、としぐさを見せれば冷たい台詞は聞かなかったフリで、幼馴染は“いってらっしゃい”と手を振った。
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