第1章

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だからといって、別に何をするわけでもない。 リビングでコーヒーを飲み、そのままそこで居座って、お互いに好きなことをする。 ただそれだけのこと。 嵩史は書庫から持ち出した本の文字を追い、幼馴染は見ているのか見ていないのか新聞を眺めている。 日はまだ高くて、リビングにもぽかぽかと日差しが差し込んでいる。 ぱしん。 (あ、また、だ) ふ、と、家鳴りに気がついて顔を上げると、幼馴染が嬉しそうに微笑んでいた。 「何?」 自分を見つめていたのなら、困惑してしまうな、と思いつつ問いかければ 「家鳴り」 と、嬉しそうに幼馴染は口にした。 「だから、何だよ」 「え~、だって、家鳴りに気がつくくらい静かなんだよ?」 「だから?」 「静かで暖かくて、ふぅちゃんがいて気詰まりじゃなくて、シアワセだなぁって思ったら、嬉しくなった」 ほにゃん、と、クッションに顔を埋めつつ、嬉しそうに幼馴染は笑う。 ぱたんと、音を立てて本を閉じ、嵩史はため息と共につぶやいた。 「お手軽なヤツ」 本を取り替えて来る、としぐさを見せれば冷たい台詞は聞かなかったフリで、幼馴染は“いってらっしゃい”と手を振った。
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