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「先に言っときますけど」
仕事の接待にと連れ出された、
イタリアンレストランで、
小坂は何故か恨めしい呟きを漏らした。
「俺のせいじゃないですからね」
「何の話だ?」
「ハリネズミが、わざわざ、
防護服を着込むのがいけないんだ」
だから、何の話だ。
「まぁ、とにかく入ってください」
それ以上の説明をする気はないらしい。
肩を落とした状態で入口の扉を押す。
その後に続きながら、
華やかながら和やかなその雰囲気に、
ふと、詰まらない妄想が走る。
――うちの仔犬が喜びそうだ、と。
「和さん、こっちこっち」
振り払おうとした意識は、
明るい笑顔で走ってきた声に霞んだ。
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