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ルイスとデレクは開いたドアから中を覗く。
シートは運転席と助手席だけで、後部座席は取り外されていた。
遺体を運ぶには最適の車である。
デレクは用心深く目を凝らして手掛かりを探していたが、ルイスはふと顔を上げ、ガレージの奥に停められたもう1台の車を見つめて言った。
「あのコルベットも、あなたが使用しているんですか?」
それは古い型式の真っ赤なスポーツカーだった。
車体が低く、天井がオープンにもなる美しい形のコルベットだが、体の不自由な人間には、乗り降りは楽ではないだろう。
ヒュートは小さく笑って答えた。
「格好良いでしょう?
実際に運転出来なくても、目で見て想像を膨らませるんです。
みんなと同じ肉体を持った自分が、あれに乗って街を疾走する。
隣には、美人の女の子を乗せて。」
ルイスは表情を変えずに尋ねた。
「美人を乗せてドライブする事は可能でしょう?
あなたは金持ちだ。
豪邸に住み、介助人も雇える。
若い資産家を無視する女はいないはずだ。」
「僕が金持ちで居られるのは、両親が残してくれた遺産と、兄のお陰です。
兄が雇った投資アドバイザーが有能な人物で、財産は守られ、充分な収益を得ています。
何の取り柄も無く、ハンディキャップを負っている僕が悠々自適に生活出来るのも、彼らの支えがあるからです。」
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