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捜査令状が無ければ、車や家屋の詳しい検分は出来ない。 デレクも、それを良く分かっている。 ルイスは、愚痴を零す相棒を横目で見て言った。 「諦めろ、デレク。 俺が犯人なら、刑事が帰った途端、車の中を隅から隅まで掃除するさ。」 そして、唸るデレクに尋ねた。 「おまえも、ヒュートが怪しいと思っているんだな?」 「確証は無いが、彼は違和感だらけだ。」 ヒュートは人目を避けながら生活しているようだが、話し振りは饒舌だ。 初対面の刑事に障害者の苦悩をさりげなく語る様子からしても、人見知りの孤独な青年像からは掛け離れている。 ルイスは顎に手を当てて呟いた。 「ヒュートは本当に側彎症なんだろうか…?」 すると、デレクは苦笑して言った。 「彼にその診断を下した医師が存在すれば間違いなく側彎症で、そうでなければ仮病だな。 だが、簡単にばれる嘘を吐くとは思えない。 ヒュートは、家政婦や介助人の前でも背を曲げて過ごしているはずだろ? そこまで演技を続けられると思うか?」 「…タイヤが磨り減っていた。」
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