9.

2/16
156人が本棚に入れています
本棚に追加
/186ページ
ハルが自宅でパソコンと向き合っていると、またスマホが鳴った。 さっきから何度もエバンから着信が入っているが、ハルは無視を続けていた。 出張から戻って来た知らせに違いない。 電話に出た途端、ホテルで一緒に過ごそうと言うに決まっている。 しかし、付き合っている暇はない。 エドワードに頼まれた資料集めの真っ最中である。 ところが、その後すぐに送られて来たメールを見て、ハルの気持ちが変わった。メールには『会ってくれないなら、今度こそ本当にホテルの窓から飛び降りる。』と文言が並ぶ。 エバンが自殺しない事は、ハルにも分かっている。 しかし、彼は思い詰めると、突飛な真似を仕出かす癖がある。 他人を巻き込んで騒ぎを起こすエバンを想像し、ハルはやれやれと電話を掛けた。 たった1回の呼び出し音で、エバンが電話に出た。 「ハル!会いたかったよ! プレゼントもたくさ買って来たぞ!」 「ありがとう、エバン。」 ハルはうんざりしながら形ばかりの礼を口にする。 「気持ちは嬉しいけど、今、手が離せないんだ。」 しかし、エバンは話しを聞いていないのか、勝手に自分の用件を伝える。 「すぐに来てくれ。 いつものスウィートルームで待ってるよ!」
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!