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ハルが自宅でパソコンと向き合っていると、またスマホが鳴った。
さっきから何度もエバンから着信が入っているが、ハルは無視を続けていた。
出張から戻って来た知らせに違いない。
電話に出た途端、ホテルで一緒に過ごそうと言うに決まっている。
しかし、付き合っている暇はない。
エドワードに頼まれた資料集めの真っ最中である。
ところが、その後すぐに送られて来たメールを見て、ハルの気持ちが変わった。メールには『会ってくれないなら、今度こそ本当にホテルの窓から飛び降りる。』と文言が並ぶ。
エバンが自殺しない事は、ハルにも分かっている。
しかし、彼は思い詰めると、突飛な真似を仕出かす癖がある。
他人を巻き込んで騒ぎを起こすエバンを想像し、ハルはやれやれと電話を掛けた。
たった1回の呼び出し音で、エバンが電話に出た。
「ハル!会いたかったよ!
プレゼントもたくさ買って来たぞ!」
「ありがとう、エバン。」
ハルはうんざりしながら形ばかりの礼を口にする。
「気持ちは嬉しいけど、今、手が離せないんだ。」
しかし、エバンは話しを聞いていないのか、勝手に自分の用件を伝える。
「すぐに来てくれ。
いつものスウィートルームで待ってるよ!」
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