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ハルは笑って返事をし、それから、彼女に尋ねた。 「ノイズが入って聞き取りにくいんだけど、今どこにいるんだ?」 「カフェのトイレ。」 パティは小さく笑って答える。 「カフェでナンパされるなんて初めての経験だけど、これから彼と一緒にバーに行くの。」 ハルは暫し沈黙し、頭の中を整理してから言った。 「俺にデートの報告?」 「ええ、そうよ! 相手を聞いたら、あなたも驚くわよ!」 「まさか、ドクター・ブラント?」 しかし、パティはわざとらしい溜め息をついて答えた。 「はずれ。 相手はジェス・ヒュートよ。」 ハルは、その名前に全く聞き覚えが無かった。 いつまで経っても何も言わないハルに痺れを切らし、パティが告げる。 「通称『ルシウス』。 覚えてるでしょ?」 ルシウスは、吸血クラブのリーダーである。 ハルは漸く、彼女の話しに真剣になった。 「あのオタク男とバーに行くのか?」 「ええ。面白そうでしょ?」 パティは能天気に答える。 「彼、あの時と雰囲気が全く違うの。 サングラスも掛けていないし、態度も普通よ。 それに、以外とハンサムだわ。」 「よせよ、パティ!」 ハルは語気を強めて言う。 「彼は怪しい集団のリーダーだぞ! 用心しなきゃダメだ!」 「大丈夫。彼、ブラント先生と同じ病院で働いてる内科医で友人なんですって。 だから心配ないわ。」
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