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ハルは焦りを感じた。 パティは医師の肩書きがあれば信用出来ると思い込んでいる。 好意を抱いているブラントの友人なら尚更だ。 だが、ハルは納得しなかった。 ハルはパティに噛んで含めるように話しを続ける。 「よく聞いて、パティ。 そいつがブラント医師の名を出したのは、きみを誘い出す為の罠かも知れない。 それに医者なら、妙な薬を持ち歩いているかも。 気付いたら、彼の家に連れ込まれていた、なんて事に為りかねないぞ。」 しかし、パティは笑って答えた。 「もしもの用心の為に、あなたに電話したのよ。 私に危険が迫った時は、助けに来てね、王子様!」 電話を切ろうとするパティに、ハルは慌てて叫ぶ。 「待て! 行き先はどこのバーだ?」 パティは早口で場所を教え、電話を切ってしまった。 ハルはすぐにパソコンの電源を落とし、ジャケットを掴んで部屋から出た。
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