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『出来た!』 孝介は、出来上がった作品を色んな角度から眺めて満足していた。 と同時に、昨年作った『消防車』がいかに雑な作品であったかを思い知った。あれでは、明太子と言われても仕方ない。 母さんはあの時何度も褒めてくれたが、そんなのは親バカってやつだ。先生が認めてくれたら他のみんなも一目置くんじゃないかなんて思い上がりもいいところだった。 一生懸命やるだけじゃだめだ。ものはカッコ良く作らねば。みんなの気に入るものでなければ、その努力は反感を買うだけなのだ。 この一年、色々考えた。自分の好きな物でなく、みんなの好きな物を作ってみたらどうか。でも、好きな物が上手く作れていなければ、また、納得してもらえない。そう、去年のアレもみんなのよく知っている『消防車』だから、消防車に見えなかったわけであって、いっそ『明太子カー』にしてしまえば、みんなもそれなりに納得してくれていたかもしれないのだ。だって、明太子カーなんて誰も見た事ないんだから。 そう考え、孝介は誰も見た事のない凄いもの物を作るという結論にたどり着く。 みんなが大きさで圧倒されるよう、自分の背の高さくらいある作品にした。 クラスメートの驚く顔が目に浮かぶようだった。 2学期初めの朝。久しぶりの学校。みんなが登校する1時間前に到着した。「きっと今日も1番だ」また、一番乗りで目立つ場所を陣取るつもりだったのに、教室にはもう既に1人登校していた。 龍貴だ。 『よぉ。久しぶり!』 龍貴が孝介に声を掛けた。 『よぉ。』 孝介が答えた。龍貴は孝介の持参した、バカデカい物体を凝視し、黙っていた。孝介も何も言わずに、作品を配置していた。しばらく、口をポカンと半開きにしていた龍貴だったが、 『おまえ、これ、作ったのか?』 孝介に話しかけた。 『ああ。』 『すげーな。』 孝介の頬は紅潮した。嬉しかったのだ。「龍貴が、褒めてくれた!」が、次の瞬間、龍貴は孝介の思いもよらない事を言った。 『俺のと、交換しない?』
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