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2学期始めの授業参観。
優子には我が子の作った、夏休みの工作がひときわ輝いて見えていた。優子の息子、孝介6歳。小学1年。小さい頃から消防車が大好きだった孝介は工作の宿題が出された時から消防車を作ると張り切っていた。夏休みは毎日消防署まで消防車を見に行き、図鑑を参考にしながら、何を使ってどう作れば消防車が上手く作れるか考えていた。「ママ、牛乳パック捨てないでね。」「曲がるストローの曲がるところばっかりつなげたらホースが出来そう。」息子のそんな発言を聞く度、そして一生懸命に消防車を作る姿を見ながら、優子は我が子の成長を感じ、幾度となく目頭を熱くした。不格好ではあったが、彼の努力を知っている優子には、他のどの作品より息子の消防車は傑作だった。
孝介の消防車はど真ん中の一番目立つところに飾られていた。が、ママ友達の関心は別の作品に集まっていた。
『龍貴くんのお城、すごーい!』
『ほんと、小学校1年生でここまで作れるんですね。』
『まぁ、私もちょこっとは手伝ったから。』
『でも、凄いですよ。』
『大人でもなかなかねぇ。』
『美里花ちゃんのもかわいいじゃない。さすが、美里花ママが手芸得意なだけあるわ。』
『いえ。美里花なんて、ボンドで飾りつけただけですよ。それに、龍貴くんのお城に比べれば全然。』
『匠くんのロボットも凝ってますよね。』
『いえいえ、うちは、私がこういうの苦手なもので。工作教室で作ったのそのまま持って来たんです。ほとんど先生が作ったようなものですよ。龍貴くんのはホント凄いです。』
『うちも、工作キット買って来て主人が必死になって組み立ててました。アハハハハ。龍貴君ってお勉強もできるし、賢い子は何でも出来るんですね。』
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