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「航平、メリクリ」
風呂から出たウチの居間のコタツには秀くんだけでなく大翔も入っていた。通りを走るサイレンの音がやけに近くに聞こえる。
「じゃあ、行くぞ」
外出を渋る俺を秀くんとなぜか大翔まで一緒になって強引に裏口から連れ出した。
…これだから鴨芽は。
俺にだって一人でいたい夜があるのに。
俺たちは駅前の並木通りで足を止めた。
「すげぇ人だな」
「今年は雪のイメージらしいぞ」
歩道を照らす大きな街灯と並木に巻きつけた電飾が色とりどりに輝く。渋滞で列をなす車のテイルランプもイルミネーションの一部みたいだ。
「ね、3人で悪さしたのが見つかって、航平んトコの店を手伝わされたの覚えてる?」
冷たく吹く風に肩を上げる大翔。ネックウォーマーを口元に引き上げる秀くんが答えた。
「大翔が古本屋からエロ本取ろうとしたやつ?」
「いや、秀くんにそそのかされて女風呂覗いたやつ」
懐かしい話と二人のやりとりに思わず吹き出した。
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