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「今日は飲むぞぉ!!」
俺と大翔の肩に腕を回して足を浮かせた秀くん。
人混みをテンションの高いデカイ野郎が3人が追い越していく。相変わらず兄弟みたいにじゃれ合ってゲラゲラ笑う野太い声に、鴨芽も悪くないなと思う冬の夜。
だけど来年は彼女とライトアップを見ようと密かに誓う。イチャつく恋人達や賑わう集団の中で、私鉄の駅前にデカイ男3人では悪目立ちするしモテないみたいじゃん。
お洒落した女の子の群れを眺めながら、緊迫した響きをしたサイレンの音に眉を寄せた。連ねて走るパトカー、僅かに遅れて後を走る救急車は商店街の方へと向かって通り過ぎた。
「ほら、行こうぜ」
赤色灯に気を取られていた俺を秀くんが急かして、本来の目的の繁華街へと改札を抜けた。
毎年当たり前に訪れるこの日。
当たり前の日々の積み重ねは、いいことも悪いことも時間が経てば思い出へと姿を変える。
俺はまだ気づかないでいた。
いつもいつも…
知らないところで誰かに守られていることに。
似たような日常でも、全く同じなんてあり得ないってことに。
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